堅実な資産形成のための分散投資 投資対象の選び方と組み合わせの基本
資産形成における分散投資の重要性
資産形成を始めるにあたり、リスクを抑えながら着実に資産を増やしていくためには、いくつかの基本的な考え方があります。その中でも特に重要視されるのが「分散投資」です。
分散投資とは、一つの資産に集中して投資するのではなく、複数の異なる資産に分けて投資を行う手法です。これにより、特定の資産の価値が大きく下落した場合でも、他の資産でその損失をある程度補うことが期待でき、資産全体の値動きのブレ(リスク)を抑える効果があります。
例えば、株式だけに投資していた場合、株式市場全体が不調になると大きな影響を受けます。しかし、株式だけでなく、債券や不動産、あるいは国内外の異なる地域の資産にも投資していれば、全体として受ける打撃を和らげることが可能になります。
分散投資の3つの基本原則
分散投資には、主に以下の3つの基本的な考え方があります。
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資産の種類を分散する(資産分散): 株式、債券、不動産(REITなどを通じて)、現金、商品(金など)といった、値動きの異なる複数の種類の資産に投資します。これらの資産は、経済状況によって異なる動きをする傾向があるため、組み合わせることでリスクを低減できます。
- 補足: 株式は経済が好調なときに値上がりしやすい傾向がありますが、不況時には下落しやすい性質があります。一方、債券は比較的安定した値動きが期待でき、株式とは異なるタイミングで動くことがあります。
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投資する地域・国を分散する(地域分散): 国内だけでなく、先進国、新興国など、世界中の様々な地域に投資します。これにより、特定の国や地域の経済危機や政治的なリスクによる影響を分散できます。
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投資する時期を分散する(時間分散): 一度にまとまった金額を投資するのではなく、毎月一定額を積み立てる方法です。これにより、価格が高いときに多く買ってしまうリスクを減らし、平均購入価格を安定させる効果が期待できます。積立投資は、手取り20万円からでも無理なく続けやすい方法です。
手取り20万円から実践しやすい分散投資の方法
手取り20万円の収入から資産形成を始める場合、多額の資金を一度に用意することは難しいかもしれません。しかし、少額からでも分散投資を実践する方法はあります。最も一般的なのは、投資信託やETF(上場投資信託)を活用することです。
- 投資信託: 多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が株式や債券などの複数の資産に投資・運用する金融商品です。投資信託一つを購入するだけで、数十、数百の銘柄に分散投資されているため、手軽に分散効果を得られます。
- ETF: 特定の指数(日経平均株価やTOPIX、S&P500など)に連動することを目指す投資信託で、証券取引所に上場しています。これも一つ購入することで、指数に含まれる多数の銘柄に分散投資できます。
特に初心者の方におすすめなのは、以下の方法です。
- バランス型投資信託の活用: これ一本で、国内外の株式や債券、不動産など、複数の資産クラスに自動的に分散投資してくれるタイプの投資信託です。自分で資産配分を考える必要がなく、購入するだけで手軽に高度な分散効果を得られます。
- 複数のインデックスファンドを組み合わせる: 特定の指数に連動することを目指すインデックスファンドは、運用コストが低い傾向があります。「日本株式のインデックスファンド」「先進国株式のインデックスファンド」「先進国債券のインデックスファンド」など、異なる指数に連動するファンドを複数組み合わせることで、自分で資産配分を設計しながら分散投資を行えます。NISAのつみたて投資枠の対象となっているファンドには、こうした低コストで分散効果の高いものが多くあります。
手取り20万円から始める場合、まずは毎月1万円や2万円といった無理のない範囲で積立投資から始めるのが現実的です。少額からでも、投資信託などを活用すれば、十分に分散投資のメリットを享受できます。
投資対象の基本的な選び方と組み合わせ例
分散投資でどのような資産クラスに投資するかは、ご自身の年齢、収入、リスク許容度、資産形成の目標期間などによって異なります。しかし、初めて資産形成を行う多くの若い方にとって、ある程度の成長性も期待しつつリスクを抑えるというバランスが重要になるでしょう。
一般的な資産クラスとその特徴を簡単に説明します。
- 国内株式: 日本国内の企業の株式。日本の経済成長の影響を受けやすい。
- 先進国株式: 日本以外の先進国(主に米国や欧州など)の企業の株式。世界経済全体の影響を受けやすい。
- 新興国株式: 経済成長が著しい新興国(中国、インド、ブラジルなど)の企業の株式。高い成長性が期待できる一方、リスクも比較的高い。
- 国内債券: 日本国債や日本の企業の社債など。比較的安定した値動き。
- 先進国債券: 日本以外の先進国の国債や企業の社債。国内債券より金利が高い傾向があるが、為替変動リスクなどが伴うことも。
- 新興国債券: 新興国の国債や企業の社債。金利は高い傾向があるが、政治リスクや為替リスクが高い。
これらの資産クラスをどのように組み合わせるか、いくつかの基本的な考え方があります。
例1: シンプルな組み合わせ * 国内外の株式に50%、国内外の債券に50%
例2: 少し成長性を重視した組み合わせ * 国内外の株式に70%、国内外の債券に30%
例3: 地域分散を意識した組み合わせ * 国内株式25%、先進国株式25%、国内債券25%、先進国債券25%
これらはあくまで基本的な考え方であり、ご自身の状況に合わせて調整が必要です。NISAなどを活用して投資信託を選ぶ際には、「どのような資産クラスに、どのような比率で投資しているか」を確認することが重要です。
分散投資を続ける上での注意点
分散投資は、一度設定したら終わりではありません。年に一度など定期的に、ご自身の目標や状況と照らし合わせて、資産配分が適切に保たれているかを確認し、必要に応じて調整(リバランス)を行うことが望ましいでしょう。
また、投資には必ずコストがかかります。投資信託の運用コスト(信託報酬)や売買時の手数料など、コストが低い商品を選ぶことも、長期的に見れば資産形成の成果に影響を与えます。NISAやつみたて投資枠の対象商品は、比較的低コストなものが多い傾向があります。
まとめ
手取り20万円から堅実な資産形成を目指す上で、分散投資はリスクを抑えつつ着実に資産を増やすための重要な手法です。資産の種類、地域、時間の3つの視点から分散を行うことで、特定のショックによる影響を和らげることができます。
少額から始める場合は、投資信託やETFを活用するのが現実的であり、これ一本で分散できるバランス型ファンドや、複数の低コストインデックスファンドを組み合わせる方法がおすすめです。ご自身の状況に合わせて適切な投資対象を選び、まずは無理のない範囲で積立投資から始めてみることが、資産形成の確かな一歩となるでしょう。