手取り20万円から始める資産形成 年に一度の見直しで着実に増やす
はじめに:資産形成は「始めて終わり」ではない
堅実な資産形成は、口座を開設し、積立設定を終えればそれで完了というものではありません。特に長期にわたって資産を育てていくためには、定期的な「見直し」が不可欠です。
見直しと聞くと難しく感じるかもしれませんが、これは家計や健康診断のように、ご自身の資産が計画通りに進んでいるか、そして状況に変化はないかを確認する大切なプロセスです。特に手取り20万円から資産形成を始める方にとって、限られた収入の中で効率よく、かつ無理なく続けるためには、この定期的なチェックが非常に重要な役割を果たします。
この記事では、なぜ資産形成に定期的な見直しが必要なのか、そして年に一度行うべき具体的なチェックポイントについて解説します。
なぜ資産形成の「見直し」が必要なのか
資産形成を始めた当初は、目標や計画が明確でも、時間経過とともに状況は変化します。見直しが必要な主な理由は以下の通りです。
- ご自身の状況の変化: 収入や支出、家族構成、ライフイベント(結婚、転職、出産など)によって、資産形成に充てられる金額や目標とする期間、必要な金額が変わることがあります。
- 資産状況の変化: 投資している金融商品の価格は常に変動します。評価額が増えたり減ったりするだけでなく、資産の種類ごとのバランス(ポートフォリオ)も自然と変化していきます。
- 制度や環境の変化: NISA制度の改正や税制の変更など、資産形成を取り巻く環境が変わることもあります。
- 目標とのズレの確認: 当初設定した目標に対して、現在の進捗がどうなっているかを確認し、必要に応じて計画を修正する必要があります。
これらの変化に対応せず、始めた時のまま放置しておくと、知らず知らずのうちに当初の計画から大きく外れてしまったり、リスクを取りすぎている状態になったりする可能性があります。定期的な見直しは、そうしたズレを修正し、常に最適な状態に保つために行います。
年に一度の見直しがおすすめな理由
見直しの頻度は状況によって異なりますが、年に一度の実施は多くの方にとって現実的かつ効果的です。
- 頻繁すぎない: 短期的な相場変動に一喜一憂せず、落ち着いて長期的な視点で判断できます。
- 少なすぎない: 年間の大きな変化(収入の変化、大きな支出など)を把握しやすく、手遅れになる前に修正が可能です。
- 区切りが良い: 年末年始や年度末など、ご自身の生活の区切りと合わせることで習慣化しやすくなります。
年に一度、腰を据えてご自身の資産状況や家計を見直す時間を設けることをお勧めします。
年に一度の具体的な見直しポイント
では、年に一度の見直しでは具体的にどのような点を確認すれば良いのでしょうか。以下のチェックポイントを参考にしてみてください。
1. 家計状況の変化を確認する
- 収入の変化: 昇給や転職などで収入に変化はありましたか。
- 支出の変化: 固定費(家賃、通信費など)や変動費に大きな変化はありましたか。無駄な支出が増えていませんか。
- 貯蓄ペース: 生活防衛資金や、資産形成に回せる金額は計画通り確保できていますか。
- 資産形成に回せる金額: 手取り20万円の中で、無理なく投資に回せる金額に変化はありませんか。必要であれば積立額の見直しを検討します。
家計簿アプリや収支表などを活用し、一年間の家計の流れを把握することが重要です。
2. ライフイベントと目標の変化を確認する
- 結婚、出産、住宅購入、転職など、大きなライフイベントの予定や変化はありましたか。
- それに伴い、資産形成の目標金額や目標時期に変更はありませんか。
- 教育資金、住宅購入資金、老後資金など、それぞれの目標に対する進捗は順調ですか。
目標が変われば、取るべきリスクの度合いや、必要となる資産額も変わってきます。目標の再確認は、見直しの土台となります。
3. 資産状況(ポートフォリオ)を確認する
- 現在保有している金融資産(投資信託、株式、預貯金など)の一覧を作成します。
- それぞれの評価額を確認し、資産全体における各資産の割合(ポートフォリオ)がどうなっているかを確認します。
- 投資信託の場合、どのような資産(国内株式、海外株式、債券など)に投資しているかの構成比率を確認します。
- 当初設定した理想のポートフォリオから大きくズレていませんか。例えば、株式市場の上昇により株式の割合が増えすぎている、といった状況です。
「ポートフォリオ」とは、金融資産全体の組み合わせのことです。例えば、「国内株式30%、海外株式50%、国内債券20%」のように、資産の種類ごとの配分を示します。市場の変動によってこの割合は常に変化するため、定期的に確認し、必要に応じて調整(リバランス)を検討します。
4. 投資方針とのズレを確認する
- 資産形成を始めた当初に設定したご自身の「リスク許容度」(どの程度のリスクまで受け入れられるか)を覚えていますか。
- 現在のポートフォリオは、ご自身のリスク許容度や目標に合っていますか。
- 特定の資産に集中投資しすぎているなど、当初意図していなかった偏りはありませんか。
リスク許容度は、年齢や収入、資産状況、性格などによって変化します。必要以上にリスクを取っている状態になっていないかを確認します。
5. 最新の金融制度や情報にアップデートする
- NISA制度の変更点や拡充、iDeCoの変更点など、資産形成に有利になるような制度改正がないかを確認します。
- 新しい金融商品やサービスで、ご自身の資産形成に役立ちそうなものがないか情報収集します。(ただし、安易な乗り換えは避けるようにします。)
特にNISA制度は変更が多いので、最新情報を把握しておくことは重要です。
見直しの具体的なステップ
年に一度の見直しをスムーズに進めるための簡単なステップをご紹介します。
- 期日を決める: 毎年○月○日のように、見直しを行う日や期間をあらかじめ決めておきます。誕生日や年末年始などがおすすめです。
- 情報の収集・整理: 家計簿データ、銀行口座の残高、証券口座の評価額など、必要な情報を集めます。
- 現状の把握: 集めた情報をもとに、現在の家計状況、資産状況、目標に対する進捗を冷静に把握します。
- 目標の再確認と修正: ライフイベントや状況の変化を踏まえ、目標に修正が必要か検討します。
- 計画の立案: 現状と目標のズレを修正するために、積立金額の変更、ポートフォリオの調整(リバランス)、利用する制度の見直しなど、具体的な行動計画を立てます。
- 実行: 立てた計画を実行します。
見直し頻度と注意点
年に一度の見直しを推奨しましたが、もちろん必要に応じて臨機応変に見直しを行うことも重要です。例えば、転職による大幅な収入減や、急な大きな支出が発生した際などは、年内に再度見直しを行う必要があるかもしれません。
一方で、市場の短期的な値動きに反応して頻繁に見直しを行うことは避けるべきです。これは感情的な判断を招きやすく、かえって資産形成を損なう可能性があります。見直しはあくまで、ご自身の状況と長期的な目標に沿っているかを確認し、計画の軌道修正を行うために行うものです。
まとめ:見直しは堅実な資産形成の羅針盤
手取り20万円から始める資産形成において、最初のステップを踏み出すことはもちろん重要ですが、それを長期にわたって堅実に続けていくためには、定期的な見直しが不可欠です。
年に一度、ご自身の家計、資産状況、そして目標をじっくりと見直す時間を持つことで、計画のズレを修正し、常に最適な状態で資産形成を進めることができます。これは、不確実な将来に対する漠然とした不安を減らし、着実に資産を増やすための重要な羅針盤となるでしょう。
まずは、来年のいつ、ご自身の資産形成を見直すか、手帳に書き込むことから始めてみてはいかがでしょうか。