手取り20万円から始める資産形成 リスクと正しく向き合う方法
資産形成における「リスク」とは何か?
堅実な資産形成を目指す上で、「リスク」という言葉は避けて通れません。しかし、「リスク」と聞くと、「危ないもの」「損をする可能性」といったネガティブなイメージを持つ方が多いかもしれません。特に投資の世界では、元本が減ってしまう「元本割れ」への不安は、資産形成の一歩を踏み出せない大きな要因の一つです。
しかし、金融の世界における「リスク」は、私たちが日常的に使う「危険」という意味合いとは少し異なります。金融におけるリスクとは、主に「不確実性」や「変動の幅」を指します。具体的には、将来の投資成果が予測できないこと、あるいは投資商品の価格が上昇することもあれば下落することもある、その値動きの振れ幅のことをリスクと呼びます。
つまり、リスクが高いとは、価格の変動幅が大きいことを意味し、リターン(利益)が大きくなる可能性もあれば、損失が大きくなる可能性もある状態を示します。逆にリスクが低いとは、価格の変動幅が小さく、安定した値動きをする傾向にあることを意味します。堅実な資産形成とは、この「不確実性」や「変動の幅」を正しく理解し、適切に管理しながら、長期的に資産を増やしていくプロセスと言えます。
元本割れへの不安を理解する
資産形成、特に投資に関心がある方が抱える最大の不安の一つに「元本割れ」があります。元本割れとは、投資した金額よりも、現在の資産価値が下回っている状態を指します。
なぜ元本割れが起こるのでしょうか。投資商品の価格は、企業の業績、経済情勢、市場の需給など、様々な要因によって日々変動しています。例えば、投資信託を通じて企業の株式に投資している場合、対象企業の業績が悪化したり、株式市場全体が冷え込んだりすれば、その投資信託の基準価額は下落し、元本割れが発生する可能性があります。
この元本割れのリスクは、投資商品によって異なります。預貯金は原則として元本保証があるためリスクは極めて低いですが、その分リターンも期待できません。一方、株式や投資信託は預貯金に比べてリスクは高い傾向にありますが、その分、長期的に見て預貯金以上のリターンが期待できる可能性があります。
手取り20万円からでも、将来に向けた資産形成を考える際には、この元本割れの可能性を無視することはできません。しかし、過度に恐れるのではなく、その仕組みを理解し、どのように向き合うかが重要になります。
初心者がリスクと正しく向き合うための方法
元本割れのリスクがあるからといって、資産形成を諦める必要はありません。堅実な資産形成を目指す初心者が、リスクと上手に付き合うための基本的な方法をいくつかご紹介します。
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長期・分散・積立投資の基本を実践する
- 長期投資: 短期間の値動きに一喜一憂せず、数年から数十年といった長い時間をかけて資産を育てる考え方です。市場は短期的に変動しても、長期的に見れば成長する傾向があります。時間による複利効果も期待できます。
- 分散投資: 一つの商品や地域に集中せず、複数の資産(株式、債券など)、複数の地域(国内、先進国、新興国など)に分けて投資することです。これにより、特定の資産や地域が不調でも、他の資産や地域でカバーできる可能性が高まり、全体のリスクを低減できます。
- 積立投資: 毎月一定額をコツコツと投資する方法です。価格が高い時には少なく買い、安い時には多く買うことになるため、平均購入価格を平準化できます(ドルコスト平均法)。これにより、高値掴みのリスクを抑えられます。 これらの方法は、新NISAのつみたて投資枠やiDeCoといった制度でも推奨されている、初心者にとって非常に有効なリスク管理手法です。
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自身の「リスク許容度」を知る
- リスク許容度とは、自身がどれくらいのリスク(価格変動の可能性)を受け入れられるかという度合いです。年齢、収入、家族構成、将来のライフプラン、そして何よりも「自分が値下がりを目の当たりにしたときに、冷静でいられるか」といった心理的な側面も影響します。
- リスク許容度が高い人は、多少の価格変動は気にせず、より積極的な投資を行うことができます。一方、リスク許容度が低い人は、価格変動の小さい、比較的安定した商品を中心に選ぶのが賢明です。
- 手取り20万円から始める場合、まずは少額から始め、市場の変動を実際に経験しながら、自身のリスク許容度を把握していくことも大切です。
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分からないものには投資しない
- 投資商品の仕組みや、何に投資しているのかがよく理解できないものには手を出さないことが、最も基本的なリスク回避の方法です。特に初心者のうちは、シンプルな仕組みの投資信託などから始めるのが良いでしょう。
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情報収集を継続する
- 投資対象に関する情報だけでなく、経済全体の動向や市場のニュースに関心を持つことも重要です。ただし、短期的なニュースに振り回されず、長期的な視点を保つことが大切です。信頼できる情報源から学び続ける姿勢が、リスクと上手に付き合う上で役立ちます。
手取り20万円からの資産形成 リスクとの付き合い方
手取り20万円という収入から堅実な資産形成を目指す場合、大きなリスクを取る必要はありません。むしろ、上記で述べた「長期・分散・積立」の基本を徹底し、少額から無理なく始めることが、リスクを抑えつつ着実に資産を増やす現実的な方法です。
例えば、毎月1万円や2万円といった少額から、分散されたインデックスファンドに積立投資を始めることができます。少額であれば、たとえ一時的に元本割れが発生しても、精神的な負担は比較的少なく済むでしょう。そして、市場が回復するのを待ち、積立を続けることで、将来的な値上がり益や分配金の受け取りが期待できます。
リスクは資産形成において避けられない要素ですが、「危険」と決めつけるのではなく、「不確実性」として理解し、適切に管理することが重要です。自身の収入状況やリスク許容度に合わせて、無理のない範囲で計画的に資産形成を進めることこそが、堅実な未来への一歩となります。
まとめ
資産形成におけるリスクは、「危険」ではなく「不確実性」や「変動の幅」を意味します。元本割れは起こり得る可能性ですが、長期・分散・積立といった基本的な投資手法を用いることで、リスクを低減させることが可能です。
手取り20万円から始める方も、まずは自身の許容できるリスクレベルを理解し、分からないものには投資しないことを心がけましょう。そして、新NISAやつみたて投資を活用し、少額からでも良いので、リスクを適切に管理しながら長期的な視点で資産形成に取り組むことが、堅実な未来を築くための重要なステップとなります。リスクと正しく向き合い、学びながら着実に歩みを進めていきましょう。