手取り20万円 資産形成中の「もしも」に備える具体的な方法
資産形成を続ける上で避けられない「もしも」の事態への備え
手取り20万円からでも、積立投資などを活用して堅実な資産形成を目指すことは可能です。しかし、資産形成は短期で終わるものではなく、数年、あるいは数十年と長期にわたって続けていく必要があります。この長い期間の中では、予期せぬ出来事によってまとまったお金が必要になる場面に遭遇する可能性が考えられます。
病気や怪我による医療費、急な冠婚葬祭、家電の故障や住宅の修繕費用、あるいは収入が一時的に減少する事態など、「もしも」の事態は想定外のタイミングで訪れることがあります。
このような「もしも」の事態への備えがないまま資産形成を進めていると、いざという時に積み立てていた資産を取り崩さざるを得なくなる可能性があります。これは、長期投資で重要な複利効果を損なうだけでなく、相場状況によっては損失を確定させてしまうリスクも伴います。
堅実な資産形成を継続していくためには、日々の積立に加えて、「もしも」の事態に適切に備えておくことが非常に重要になります。この記事では、手取り20万円からでも無理なくできる、「もしも」に備える具体的な方法について解説します。
資産形成を中断しないための「もしも」への備えとは
資産形成中の「もしも」に備えるための考え方はいくつかあります。基本となるのは、すでに別の記事でも触れている「生活防衛資金」ですが、それとは別に検討したいのが「予備費」の考え方です。
1. 基本となる生活防衛資金の確保と確認
まず、資産形成を始める前の大前提として、生活防衛資金を確保しておくことが推奨されます。生活防衛資金とは、病気や失業など、収入が途絶えたり大きく減少したりする事態に備えるための資金であり、生活費の3ヶ月から1年分を目安に、すぐに引き出せる普通預金などに置いておくのが一般的です。
もし、まだ生活防衛資金が十分に確保できていない場合は、資産形成と並行して、あるいは優先して確保することから始めることを検討してください。この資金があることで、本当に困窮した場合でも資産を取り崩さずに済む可能性が高まります。
2. 「予備費」という考え方を持つ
生活防衛資金はあくまで「もしも」の最終防衛ラインです。しかし、人生においては生活防衛資金を使うほどではないものの、数十万円単位のまとまった支出が必要になる場面が比較的頻繁に起こり得ます。例えば、
- 家電(冷蔵庫、洗濯機など)の故障・買い替え
- 車の車検費用や突発的な修理
- 身内の冠婚葬祭
- 賃貸物件の更新料や引っ越し費用
- 自己投資(スキルアップのための費用など)
このような支出は、毎月の給与から捻出するのが難しい場合もあります。かといって、せっかく積み立てている投資資産を安易に取り崩すのは避けたいところです。そこで役立つのが「予備費」という考え方です。
予備費は、生活防衛資金とは異なり、比較的近い将来(数ヶ月〜数年以内)に発生する可能性のある、計画的ではないが想定されうる大きめの支出や、ある程度予測できるが毎月ではない支出に備えるための資金です。
手取り20万円からの予備費の作り方と管理
手取り20万円の収入から、生活費、貯蓄、積立投資に加えて予備費まで捻出するのは難しく感じるかもしれません。しかし、工夫次第で備えを作ることは可能です。
1. 予備費の目安額を設定する
まずは、過去の経験や今後のライフプランから、どのくらいの予備費が必要になりそうか見積もってみましょう。例えば、
- 年間を通して発生しそうな臨時支出(冠婚葬祭、旅行など)
- 数年以内に発生が予測されるがまとまった費用(車検、家電買い替え計画など)
- 「これくらいあれば安心」と思える金額(例えば10万円、20万円、30万円など)
これらの要素から、まずは「〇〇万円を予備費として準備しておこう」という目標額を設定します。最初から大きな額を目指す必要はありません。例えば、まずは10万円を目標にするなど、無理のない範囲で設定することが継続の鍵です。
2. 予備費の捻出方法を考える
予備費を作るための資金は、毎月の家計を見直すことで捻出できないか検討します。
- 固定費の見直し: 通信費、保険料、サブスクリプションサービスなど、毎月(毎年)かかる費用を削減できないか検討します。固定費削減は、一度見直せば継続的な効果があるため、予備費の積み立てだけでなく、積立投資額を増やすことにも繋がります。
- 変動費の管理: 食費、交際費、趣味娯楽費など、コントロールしやすい費用を意識的に抑えることで、予備費に回せる資金を生み出します。
- ボーナスなどの一時収入: ボーナスや副業収入などがあれば、その一部を予備費として確保することも有効です。
家計管理をしっかりと行うことで、予備費や生活防衛資金、そして資産形成に回す資金のバランスを取りやすくなります。
3. 予備費の管理場所を決める
予備費は、必要になったときに比較的すぐに使える状態にしておく必要があります。しかし、生活防衛資金のように常に手元に置く必要はありません。
- ネット銀行の活用: 普通預金の中でも、金利が高めのネット銀行を利用する。目的別口座を設定できる銀行であれば、「予備費」などと名前をつけて管理することもできます。
- MRFやMMF: 比較的安全性が高く、換金性の高い投資信託を利用することも選択肢の一つですが、元本保証ではない点は理解しておく必要があります。
- 通常の銀行口座: 生活防衛資金とは別の口座に分けるなど、分かりやすく管理することが重要です。
重要なのは、この予備費は「資産形成のための投資資金とは違う」という意識を持ち、明確に区別して管理することです。
備えがあれば資産形成は続けられる
手取り20万円という状況でも、生活防衛資金を確保し、さらに予備費の概念を持って一定額を備えておくことで、「もしも」の事態が発生しても慌てて投資資産を取り崩す必要がなくなります。
これにより、精神的な余裕を持って、当初の計画通りに積立投資を継続することが可能になります。長期的な視点での資産形成においては、相場の一時的な変動に一喜一憂せず、淡々と継続することの重要性が非常に高いと言えます。
「もしも」への備えは、単に不測の事態に対応するためだけでなく、資産形成を成功させるための重要な土台となるのです。
まとめ
手取り20万円からの堅実な資産形成は、日々の積立だけでなく、「もしも」の事態への備えを同時に行うことで、より安定して継続することができます。
- 基本となる生活防衛資金をしっかりと確保します。
- 生活防衛資金とは別に、数年内に起こりうる大きめの支出に備える「予備費」の概念を持ち、目標額を設定します。
- 家計の見直しなどを通じて予備費を捻出し、すぐに引き出せる流動性の高い方法で管理します。
これらの備えを整えることで、予期せぬ出費が発生した場合でも資産形成を中断せずに済み、安心して長期的な資産形成に取り組むことができます。まずは、ご自身の状況に合わせて必要な備えの額を見積もり、予備費の積み立てを始めることから検討してみてはいかがでしょうか。