初心者向けポートフォリオの作り方 堅実な資産配分の基本
ポートフォリオとは何か 資産形成におけるその重要性
資産形成を始めるにあたり、「何に投資すれば良いのだろう」と考える方は多いことでしょう。個別株、投資信託、国内外の資産など、様々な選択肢があります。しかし、一つの資産だけに資金を集中させるのは、リスクを高めることにつながります。ここで重要となるのが「ポートフォリオ」という考え方です。
ポートフォリオとは、自身が保有する様々な金融資産の組み合わせ全体を指します。株式、債券、投資信託、現金など、異なる種類の資産を組み合わせて保有することで、特定のリスクが全体の資産に与える影響を抑えることを目指します。これは、「卵を一つのカゴに盛るな」という投資の格言が示す通り、リスク分散の基本的な考え方に基づいています。
適切に分散されたポートフォリオは、市場の変動があった場合でも、特定の資産の大きな下落が資産全体に与えるダメージを軽減する可能性があります。これにより、長期的な視点での堅実な資産形成につながる土台を作ることができます。
ポートフォリオ構築の基本ステップ
資産形成におけるポートフォリオの重要性を理解したところで、次にどのように自分自身のポートフォリオを作っていくかを考えてみましょう。初心者の方が取り組みやすい基本的なステップを解説します。
ステップ1: 資産形成の目標と期間を設定する
まずは、なぜ資産形成をするのか、具体的にどのような目標(例: 〇年後に△円を貯める、老後資金の準備など)があるのかを明確にします。目標によって、許容できるリスクの度合いや、資産を保有しておく期間が異なります。目標設定については、別の記事「堅実な資産形成の第一歩 目標設定の重要性と具体的な決め方」でも詳しく解説していますので、そちらも参考にしてください。
ステップ2: ご自身の「リスク許容度」を把握する
リスク許容度とは、資産運用においてどの程度のリスク(資産価値が一時的に下落する可能性など)を受け入れられるかという度合いです。リスク許容度は、年齢、収入、家族構成、今後のライフプラン、そしてご自身の性格などによって異なります。
一般的に、若く、今後も安定した収入が見込める方や、運用期間を長く取れる方は、多少のリスクを取ってでも高いリターンを目指す配分も検討できます。一方、運用期間が短い方や、資産が大きく減ることに強い不安を感じる方は、リスクを抑えた配分を検討する必要があります。
ご自身の性格として、資産価値が一時的に下落した際に冷静でいられるか、それとも大きなストレスを感じるか、といった点を考慮することも重要です。リスクを抑える具体的な方法については、別の記事「投資リスクを抑える基本 初心者のための具体的な方法」もご参照ください。
ステップ3: 資産クラスごとの特徴を理解する
主な資産クラスとその一般的な特徴を理解することは、資産配分を考える上で役立ちます。
- 株式: 企業の所有権の一部。長期的な値上がり益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)が期待できますが、企業の業績や市場全体の動きによって価格変動が大きくなる傾向があります(リスクが高い)。
- 債券: 国や企業が発行する借用証書。定期的に利息が支払われ、満期には元本が返済されるのが基本です。株式に比べて一般的に価格変動が小さく、リスクが低いとされています。
- 不動産: 土地や建物への投資。家賃収入(インカムゲイン)や売却益(キャピタルゲイン)が期待できます。現物不動産投資は多額の資金が必要ですが、REIT(不動産投資信託)などの方法もあります。
- 現金・預金: リスクは非常に低いですが、インフレ(物価上昇)が進むと実質的な価値が目減りする可能性があります。流動性(いつでも引き出せる手軽さ)が高いのが特徴です。
これらの資産クラスは、それぞれ異なるリスクとリターンの特性を持ち、市場環境によって値動きの傾向が異なります。ポートフォリオでは、これらの異なる動きをする資産を組み合わせることで、全体の安定性を高めることを目指します。
ステップ4: 具体的な資産配分を検討する
ステップ2で把握したご自身のリスク許容度と、ステップ3で理解した資産クラスの特徴を踏まえ、具体的な資産配分の割合を検討します。
ポートフォリオの構築に唯一絶対の正解はありません。リスク許容度が低めであれば債券や現金の比率を高く、リスク許容度が高めであれば株式の比率を高くするなど、ご自身の状況に合わせて調整します。
一般的な資産配分の例(あくまで考え方の一例です):
- 安定型: 株式比率を低く(例: 30%)、債券や現金の比率を高く(例: 債券50%、現金20%)。価格変動を抑えたい方向け。
- バランス型: 株式と債券の比率を均等程度に(例: 株式50%、債券50%)。リスクとリターンのバランスを取りたい方向け。
- 成長型: 株式比率を高く(例: 株式70%以上)。より高いリターンを目指したい方向けですが、リスクも高くなります。
また、年齢に応じてリスク資産の割合を調整する「ライフサイクルアプローチ」という考え方もあります。例えば、「(100 - 年齢)%を株式に投資する」といった簡潔な目安がありますが、これもあくまで参考の一つとして捉えてください。
手取り20万円から資産形成を始める場合、最初は少額から始める方が多いでしょう。具体的な資産配分を考える際には、NISAやつみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)、iDeCoといった非課税制度を活用することを検討できます。これらの制度を活用する場合、制度内で選択できる投資信託を中心にポートフォリオを構築していくのが現実的です。
例えば、新NISAのつみたて投資枠で国内外の株式に広く分散投資する投資信託を積み立てつつ、iDeCoでバランス型の投資信託を選ぶ、といった組み合わせも考えられます。具体的な商品選びについては、別の記事「投資信託の基本 種類と選び方を分かりやすく解説」も参考にしてください。
ポートフォリオの見直しとメンテナンス
ポートフォリオは一度作ったら終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。
- 定期的な確認: 年に一度など、決まったタイミングでポートフォリオの内容を確認しましょう。保有している資産の価格変動により、当初決めた資産配分の比率が崩れていることがあります。
- リバランス: 崩れてしまった資産配分の比率を、目標とする比率に戻す作業を「リバランス」と呼びます。例えば、株式の価格が大きく上昇して株式の比率が高くなりすぎた場合、増えすぎた株式の一部を売却して、比率が低下した債券や現金を買い増す、といったことを行います。リバランスは、当初定めたリスク水準を維持するために有効です。
- ライフステージの変化に応じた調整: 結婚、出産、住宅購入、転職、退職など、ご自身のライフステージに変化があった際は、目標やリスク許容度が変化する可能性があります。その際には、ポートフォリオの資産配分も必要に応じて見直すことを検討しましょう。
まとめ 堅実な資産形成のための第一歩
ポートフォリオ構築は、感情に左右されず、長期的な視点で堅実な資産形成を進めるために不可欠な考え方です。ご自身の目標、リスク許容度を把握し、様々な資産クラスを組み合わせて分散投資を行うこと、そして定期的に見直すことを意識することで、より安定した資産形成を目指すことができます。
最初から完璧なポートフォリオを目指す必要はありません。まずは少額から、ご自身の理解しやすい投資信託などを活用して始めてみることが第一歩となります。このガイドラインが、皆様の堅実な資産形成の助けとなれば幸いです。次に取るべき具体的な行動として、まずはご自身の目標とリスク許容度について考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。